最近、タレントが街歩き中に突撃ロケをする番組が増えています。
「あれって本当にアポなしなの?どうせやらせでしょ?」
と思う人も少なくないですが、本当にアポなしのケースが多いんです。視聴者としてはライブ感があって楽しいけど、取材される飲食店側からすると何の連絡もなくテレビクルーが来られてもちょっと困りますよね……。
飲食店の広報担当として過去に100件以上のテレビ取材に対応してきた経験から、アポなしロケの実情と広報対応で気をつけるべきポイントをまとめます。
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アポなしロケは増えている?やらせって本当?

ここ2〜3年でアポなしっぽいロケをする番組は増えています。2018年1月現在放送中のものを上げると、こんな感じ。
- 『火曜サプライズ』の「アポなしグルメ旅」
- 『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系)の「街に芸能人が現れたら声をかける?かけない」
- 『笑ってコラえて!』の「朝までハシゴの旅」
- 『夜の巷を徘徊する』
まだあると思いますが…代表的なのは日テレ『火曜サプライズ』の「アポなしグルメ旅」です。公式サイトにはこのように書かれています。
スタッフによる事前交渉ゼロ!
仕込みナシだからこそ起こる、予想外のハプニングや
地元で愛されている名店を発見&奇跡連発の「アポなしグルメ旅」や
ウエンツと石ちゃんの食いしん坊兄弟が、その街の絶品グルメを食べつくす
「食いしんBOYSのおいしい2人旅」など
普通の旅番組とはひと味違った、楽しい企画が盛りだくさん!
» 引用:火曜サプライズ公式HP
中にはアポなしのように見せる演出だけで事前に話をつけている番組もあるのですが、少なくとも『火曜サプライズ』はやらせ一切なしの突撃です。
実際にこの番組からの取材依頼を受けたときは、本当に何の前触れもなくくるので、その場で判断することになりました。
広報担当の対応の仕方については後半で書きますね。
アポなしは迷惑!という声もある

そんな感じなので、当然「迷惑だ!」という声も上がっています。
「アポなし」関連の検索ワードも、
- 「アポなしロケ 迷惑」
- 「アポなし旅 失礼」
- 「アポなし 怒られる」
などなど悲惨な感じ…。
2017年1月には火曜サプライズアポなし旅が面白いけど、迷惑だと話題というまとめがちょっと話題になっています。
事の発端は2015年頃で、ウエンツ瑛士とTAKAHIROらアポなしロケで一般人に怒られるという回がありました。
ウエンツは取材許可の交渉のため店に入り、店主からは「うちとしては嬉しいです」と快諾されたものの、客の1人が「オレには迷惑だから、食べ終わってからにして。こういうところでやるんだったらさ」と、注意を受けた。
ウエンツはテンション低めにTAKAHIROが待つ店外へ戻り「お店的にはOKなんですけど、お客さんに『やめてくれ、そういうの』って怒られた」と報告した。結局、その客が食べ終わるまで待つこととなった。
こういうトラブルも起きますよね…。お店としては宣伝になって嬉しいけど、お客さんからしたら迷惑でしかない。判断がむずかしいところです。
Twitterを見てみても、
「『テレビで紹介するんだからいいでしょ?』ってことなの?視聴者は誰もそんなの求めてない。アポなしで来られたら店も客も迷惑」
「アポなしにこだわる理由って何?芸能人が来たからお店に入れてくれると思ってるの?お店にも迷惑だし、いいことない」
こんな否定的な意見が多い。
実際、出演者自身が文句を付けながらしぶしぶ交渉に……という回もたまにあります。
お客さんにとっては迷惑かも
自分がお客さんだったらどう感じますか?
「サプライズで芸能人が見れるなんて、嬉しい!!」
という人と、
「こっちは普通に食事してるんだから、騒ぐのはやめてくれ」
の二極化が見えます。
私個人は「テレビには映りたくない人」ですが、非日常の感じが楽しい気持ちもわかります。外には人がいっぱい野次馬が集まって、店内もお客さんそっちのけの感じになるので、この状況を楽しめる人と楽しめない人がいますよね。
迷惑の声もあるのに増えている理由、それは「予算カット」

こういったアポなし番組が増えている背景は単純で、「タレントにやらせたほうがコストがかからないし、面白い画も撮れて一石二鳥」だからです。
グルメロケというのは、王道ルートでやるとかなり手間がかかります。
- ADさんやディレクターが取材先を探す
- 店舗に電話して交渉する
- 店舗から本部に確認
- 本部にて判断し、番組側にOKの連絡
- 必要に応じて事前ロケハン
- 日程調整(タレントのスケジュール確保)
- 台本づくり、場合によって店にも共有
- 出演タレントへお店情報インプット
- ロケへ
こんな感じ。テレビ業界も人手不足なので(特にADさんが育たないうちにどんどんやめてしまう)、低予算での制作を強いられています。
予算カットには、ここのコストを削るのが手っ取り早い。タレントに突撃でやらせれば、ADさんが事前にがんばる人件費はだいぶ削れます。しかも視聴者的にも「スリルがあって面白い!」(と、少なくとも番組側は思っている)ので、こういう番組づくりが増えているんです。
しかも、数年前まで多かった「突撃っぽい番組構成」が、SNSが出てきてから「やらせだー」と叩かれるようになった。アポ取ったらやらせだと言われ、アポ取らなかったら迷惑と言われ、どうすりゃええねんって話ですよね…
実際のロケの様子と、裏で行われているやりとり

実際のロケの様子では、1人のタレントが店に入っていき、他の出演者とロケ隊が外で待つ…という流れです。
個人経営店であればその場で店長などが判断することになりますが、チェーン店や管理者が別にいるようなお店だと、その場で電話をかけて判断を仰ぎます。
この連絡の間タレントたちがそわそわしながら待つ、、という展開がテレビ的にはおいしい感じですね。
ロケ時間も限られているし、NGだったら食べれない!というドキドキの裏で、店舗と本部との間ではどんなやりとりが行われているのでしょうか…。
「本部からの折り返し待ちで…」
さらっと言いますが、こういう場合は本部では迅速な対応が必要です。
取材のビッグチャンスは突然くるものです。ここで本部の広報の人が電話にでなかったら、このロケは終了ですよね。電話に出たとしても、その場で状況を把握して社内で素早い確認・判断ができなければそれまで。
アポなし取材は、即時判断が必要です。モタモタ上司に確認しているうちに、ロケ隊は行ってしまいます。
これが広報担当泣かせと言った理由です…。
ここからはお店側の「広報・PR」目線から、対応のポイントをお話します。
アポなしロケが来たとき、広報はどう判断する?
最初に書いたように、アポなしロケをしている番組はだいたい決まっています。
受ける条件や判断基準について、あらかじめレギュレーションを設けておくのがおすすめです。普段から番組を見ていればどんな紹介のされ方になるか想像できるので、日頃のメディア研究も大事です。
基本的にはポジティブな店舗紹介になるはずなので、受ける方向で考えましょう。ただし、お店が混んでいて受けられない、嫌がるお客さんがいるなどの場合は、営業に集中するために断ったほうが賢明です。
※補足:断ったシーンの使用は要注意
断った場合あとかスタッフに「断られたー、、というシーンだけ使っていいか?」と聞かれます。ただ断った場面だけだとマイナスイメージになってしまうので、きちんとお店の紹介を入れてもらえるよう交渉しましょう。
現場で押さえておくこと
店舗から突然の連絡があった場合、広報部でいくつかの指示をします。お店のジャンルや状況にもよりますが、現場では最低限以下は押さえておきましょう。
- 映りたくないお客さんは必ず確認する
- 番組担当者の名刺を必ずもらう
- 映したくないエリアやモノは隠す
- O.A.予定日を聞く
① 映りたくないお客さんの確認は必ずする
お客様は神様…ではないですが、ロケよりもお客様が優先です。現場にいるスタッフで手分けして、映り込みそうな場所にいるお客様に番組と撮影内容を伝え、問題ないかの確認をします。少しでも嫌な顔をするお客様がいたら席移動にも柔軟に対応しましょう。
② 番組担当者の名刺を必ずもらう
番組担当者からも挨拶してくれると思いますが、名刺をもらい、広報担当者から後日連絡させる旨を伝えてください。撮影中はワタワタして名刺交換できる状態じゃないので、タレントが去ってから挨拶しましょう。
③ 映したくないエリアやモノは隠す
ごちゃごちゃしたキッチンまわりや、期間限定メニューなどは隠しましょう。番組を見て来てくれるお客さんのことを考えると、放送される頃に提供していないメニューは映さないようにするのがベターです。
④ O.A.予定日を聞く
撮影の時点でO.A.日はだいたい決まっていますので、聞いておくよう指示しましょう。
撮影後:お礼メールとともに店舗情報など送っておく

撮影後、店舗から名刺を共有してもらったら、取材のお礼メールを送ると親切です。
そのメールで、店舗の基本情報(店名表記、電話番号、住所など)を送ってあげるとさらにGOOD。一瞬のテロップとはいえ、社内の人間や関係者は間違いに気づきます。「広報部なにやってんだ」とならないように。
こういったテロップは、実はADさんが食べログなどで確認して出す場合がほとんどなんです。人的ミスは起こりますので、、事前に予防しておきます。
テレビの人たちは電話連絡が基本なので、何かあれば電話してしまってもOKだと思います。O.A.予定日が近くなったら、予定通り放送されるかどうか聞き、社内や関係者に告知しましょう。
意外とこういうのは、社内の人たちが見て「うちの店だ〜」となり、愛社心を深める…というインナーコミュニケーションの役割のほうが重要だったりするんですよね。宣伝効果よりも大きな意味があります。
注意:広告ではないのでゴリ押しは禁物
広報担当としてやってはいけないことは、ここぞとばかりにゴリ押しすること。
こういう風に紹介してください!おすすめはコレ!一言でいいので、今度の新メニューの紹介入れてください!
とやってしまう人、わりといます…。おすすめはOKですが、いきすぎないように注意しましょう。広告のように自由自在にはできません。
まとめ:いろんな側から見てみると楽しい
以上、アポなしロケの実情を番組側・視聴者側・社内側から見てみました〜。
もし街中でアポなしロケに遭遇したら、騒ぎ立てずに静かな野次馬でいましょう。何の番組ですか?いつオンエアですか?くらいはスタッフに聞いても大丈夫だと思いますよ。
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おわり。