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ロケ撮影に欠かせない「フィルムコミッション」とは何か【歴史・役割・課題】

映画、ドラマ、CM、プロモーション動画などの撮影。

どこで撮影するか、すなわち「ロケ地」の選定は、制作にかかるあらゆる調整のなかでも大変なものです。このロケ地調整やロケ誘致に欠かせない「フィルムコミッション」という団体があることをご存知でしょうか。

私は以前、ロケ地コーディネートに携わっていたことがあり、興味のある領域なので改めてまとめてみます。フィルムコミッションとは何か、その歴史、業務内容や役割、日本のフィルムコミッションの現状などが気になる人はどうぞ。

「フィルムコミッション」とは何か

Film commission 3

「フィルムコミッション」とは、映画やドラマ、CMといった映像制作の際に、ロケを誘致して撮影をサポートする非営利団体のことです。日本国内に200あるとも300あるともいわれていて、各地域ごとに自治体が中心となって組織化しています。

よく映画のエンドロールなどで、地域名やそのエリアの企業などがずらっと並んでいるのを見ますよね。ロケ地になると、調整は大変ですが、地域の知名度を高められたり観光客誘致に繋がったりと、いいことがたくさんあります。これもPR(Public Relations)の一環ですね。

ロケ誘致は「地域活性化施策」のひとつとして経済効果が期待されているため、フィルムコミッションが各地域で窓口を一本化し、ロケ地情報の提供や、施設などを利用する際の許認可申請をサポートしたりしているのです。

Film commission 4

フィルムコミッションは世界的に存在する組織で、1940年代にアメリカ合衆国ユタ州で発足したのが世界で初めて。1975年には、AFCI(国際フィルムコミッショナーズ協会)が発足しました。

日本では、都道府県や市町村の観光協会内の一部署として運営されていることも多く、スタッフも兼任だったりします。地域によってかなり差がある団体です。一部だけのせておくと、こんな感じ。

こうした全国のフィルムコミッションの連絡機関として存在するのが、2009年に設立された、「特定非営利活動法人 ジャパン・フィルムコミッション」です。海外ロケの受け入れを充実させる目的でつくられました。

世界的には、AFCI(国際フィルムコミッショナーズ協会)AFCNet(アジア・フィルム・コミッションネットワーク)といった団体もあります。実は世界レベルの莫大な市場です。

フィルムコミッションの業務内容と役割

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フィルムコミッションの大きな目的としては、

「ロケ誘致により地域を活性化させること」

にあります。ロケを誘致することは手段であって、あくまで目的は地域の経済や観光に貢献すること。そのために大切にしている要件が3つあります。

  1. 非営利公的機関である
  2. 撮影支援に対してワンストップサービスを行っている
  3. 作品内容を選ばない

こちらです。

まず①、地域全体のためにある組織なので、制作者とは対等な立場をキープします。そして撮影にあたっては、地域との合意形成を大切にする。利益を追求することはしません。

つぎに②、一部を担うのではなく、窓口機能を果たすことです。地域内で協力体制や信頼関係をもつことで、仲介者として一貫してサービスを提供します。

そして③、表現の自由を尊重し、作品の内容によってロケ地調整をするかどうか変えることはしません。最終的にロケ地としてOKを出すかどうかは、各施設が決めることです。

あくまで調整者として中立的な立場でかかわるということですね。

具体的な業務内容は多岐にわたるのですが、一部を抜粋するとこのようなものです。

  • 制作者の誘致・プロモーション活動
  • 制作者へのロケーション撮影支援
  • 支援した作品を活用した地域活性化、PR活動
  • 映画公開時のロケ地情報パンフレット制作・配布
  • ロケ地での映画ポスター等の配布・手配

──Wikipediaより抜粋

撮影を調整していくフローにおいては、事前ロケハンの協力や撮影許可申請の代行、ロケ立ち会い、ロケ中の食事や宿泊の手配、エキストラの手配などいろいろとやります。

立ち位置としては、現場のロケ隊と連携する感じになります。映画やドラマ、CMの撮影には多くの人が関わっています。制作チームだけでも、演出、制作、音声、撮影、照明、ヘアメイク、美術など。そこにコーディネーター、方言監修、技術監修などがいたり。

こういう膨大なスタッフさんたちに対して、「地域側」として関わる。エキストラはフィルムコミッション側の管理であることも多いです。

フィルムコミッションの介在により具体的に実現すること

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フィルムコミッションがあることで実現した事例はいろいろとあるのですが、中でも大きいものを紹介します。

道路封鎖など大がかりな撮影

地域において道路を封鎖したり、長時間に渡り交通をストップさせたりして撮影したい場合、フィルムコミッションが活躍します。

少ない影響で撮影するために早朝や深夜に行うことも多いのですが、日中の時間帯などで人々の生活に影響する場合、地域住民との合意が必須。バスなどの交通機関も、何本も迂回ルートを走らせるなどの対応が必要になります。

電車やバス会社と数ヶ月前から調整し、ようやく実現することもあります。

国有地や官公庁、公共施設などでの撮影

ロケコーディネートで最も大変といえるのが、施設などに対する撮影許可申請です。何枚も書類や企画書を提出するなど、かなり時間と手間がかかるものなのです。これがフィルムコミッションを通せば申請不要になったり、簡単に済んだりすることがあります。

余談ですが、たとえば空港シーンの撮影は地方空港で撮っていることがほとんど。航空会社としてはPR活動になるので、使用費はかからず、空港とフィルムコミッションが連携して国土交通省との調整などやってくれたりします。このあたり、少し古いドラマですが『空飛ぶ広報室(2013)』がリアルで面白いのでぜひどうぞ。

大人数のエキストラの手配

とにかく人数が必要!というエキストラの確保は、フィルムコミッションがやることがあります。「通行人」や「群衆」みたいなときですね。その街の自然な感じを再現するという意味でも、地域に根ざしたフィルムコミッションの役目です。

エキストラが大人数になる場合、エキストラの中から何名か取りまとめ役を立て、グループ化して管理したりという対応も。これもフィルムコミッションの協力なくしては成り立たない部分です。

人数に伴って、警備体制の充実や道路使用許可の取得も行います。

フィルムコミッションが抱える課題や問題点

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と、映画やドラマの撮影にはもはや欠かせないフィルムコミッションのネットワークですが、もちろん課題もあります。特に日本はすこし特殊な環境になっていて、いくつか問題視されていることがあります。ここでは特に大きなものを2つ。

許認可手続きの複雑さ

私自身もやったことがあるのですが、とにかく撮影にかかわる許認可手続きは大変です。

海外では制度が整っているところも多いのですが、日本は各施設や地域が独自ルールでやっていることもあり、窓口が一本化できていなかったりします。

とにかく複雑で、一度許可が降りても現場で「聞いてない」が発生するなど、あとから問題になることも。とても日本らしい課題で、これが次に紹介する課題にも繋がってきます。

海外作品をアレンジできる人材の不足

もうひとつは、海外作品に対応できる人や業者が少ないことです。前述したような許認可の仕組みからも、言語や文化が違えばさらに難しいことが想像できます。

海外映画の撮影ともなれば、大きなお金と大勢の人が動きます。長期での撮影ともなればビザが必要になったり、国内での収入として課税対象になったりと、法的なことや税金も含めて対応しなければなりません。こうした体勢が整っていない以前に、そもそもロケの問合せがあっても言語の壁で対応に時間がかかるなどもよくあります。

制作会社がやるのかフィルムコミッションがやるのか……というのも曖昧だったりして、海外ロケを誘致したいと言いつつも、なかなか歓迎体勢がつくりきれていないのが現状です。「日本は撮影しづらい国」という印象をもたれてしまっていることもあり、課題です。

映画やドラマの裏側にいる「フィルムコミッション」に注目

こうやって記事を書いていますが、かなりニッチな話題だと思います。裏側なのであまり知られておらず、情報も開かれていなくて、この業界に携わりたい!と思うどころか、こういう仕事があることにすらたどり着ける人が少ない。。

全体的に人材が足りていないようなので、求人などを探してみるのもいいかもしれません。

映画やドラマなど映像作品を見るときは、ぜひエンドロールにも注目してみてください。制作の裏側やメディア事情についての関連記事もどうぞ。

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おわり。