COLUMN

大衆を動かし社会を変える唯一の方法は、ビジネスで仕組みつくること

 

ツイートにも書いたのですが、

「社会を変えるにはビジネスで仕組みをつくるしかない」

と思っています。

最近は「みんなで声を上げよう!」という運動が盛り上がっていますが、それだけでは社会の歪みはなくならないと思うんです。

この考えは、学生時代の経験から生まれて、大学で勉強するなかで確信に変わりました。就職にまで影響したことなので、自分のなかでの整理も兼ねて考えていることをシェアします。

発展途上国でボランティアを経験し、社会問題の根深さを知る

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大学に入ったら海外に行くぞー!と思っていた私は、1年生のときにカンボジアで国際ボランティアのようなことを経験しました。

「ボランティア」といえば聞こえがいいものの、実体はほとんど海外体験ツアーです。当時ちょっと流行っていて、意識が高い学生はとりあえず参加してみる雰囲気がありました。

「子どもたちのキラキラした笑顔を見て、貧しくても幸せに生きている姿に感動した!」

 

こういうフレーズ、当時(2009〜2013年頃)の学生の間ではよく聞きませんでしたか……?でも私はどうもそんな風には思えなくて、

貧しくても幸せなわけじゃない。ただ単に、この世界しか知らないだけ。

とナナメに見てしまいました。まぶしい笑顔で寄ってくる子どもたちは、自分の知ってる小さな小さな世界のなかで感情を表現しているだけにすぎません。村から出たこともない彼らにとっては、見知らぬ黄色人種が現れて遊んでくれるだけで「キラキラした笑顔」でいられる充分な理由になるんです。

それなのに、いたく感動した純粋な学生はすぐにカンボジアに学校を作ろうとしますね。心意気はすばらしいと思ったけれど、根本的な貧困の解決につながるとは思えませんでした。

ただ与えるだけで何かが変わるなら、もっと大きな力やお金が動いているはずでは?助けになるどころか、一方的に与えることでマイナスになることもあるのでは?と思ったんです。

そのときは理由がうまく説明できなかったけど、それから大学で学んでいくうちに、この考えは確信に変わっていきました。

与えるだけでは貧困はなくせない。大事なのは、持続する仕組みをつくること

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モヤモヤと過ごしていたとき、国際社会学の授業で見た映像のなかにこんなシーンがありました。

貧しい国の人々に、先進国からたっぷりと寄付をした。喜んだ人々は欲のままに使い込み、得たお金はあっという間に底を突いてしまう。お金がある喜びが忘れられない人々は、盗みや奪いあいを始め、紛争が絶えなくなる。一度豊かさを知ってしまったが最後、もう二度と貧しかった頃の気持ちは取り戻せなかった。

よかれと思ってしたことが人間の醜い部分を引き出してしまったという、本当にあったエピソード。

小さい頃から「寄付はいいこと」と植え付けられて信じ込んでいましたが、「与えることでむしろ破滅に向かわせることもある」と気づきました。

社会学でよく聞く「サステナブルな社会」

環境社会学や国際社会学でよく聞く言葉に、「サステナブル(持続可能)な社会」という概念があります。

環境を良くするにも、貧困をなくすにも、一時的な応急処置をしても意味がない。半永久的に持続する仕組みによってしか社会問題は解決できないし、その仕組をつくる工程はビジネスというかたちでなされるべきだと学びました。

具体的な方法はいろいろあります。

たとえば、農地を運営して現地民たちに農業のやり方を地道に教え、自分たちで生産から配送までできるようにさせるとか。または、現地でファッションブランドを立ち上げて、現地民たち技術を身につけさせるとか。

もしくは流通の仕組みをつくって、海外への輸出販売ルートを整えてあげるのもあり。とにかく、ただお金だけをボーンと与えるのではなく、お金が自然と現地に落ちていくシステム構築する必要があります。

そしてその仕組みが伝達されてゆくための仕組みも必要です。この一連の流れをやれば、必然的にビジネスとして成り立ちます。

消費社会学を専攻して、ビジネスで消費は変えられると知る

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貧困の問題を例に上げましたが、同じことがどの分野にも言えます。なにかしら「社会を変えたい」と思ったら、「熱意」「意気込み」だけではどうにもなりません。

経営コンサルタントの大前研一さんの有名な言葉があります。

人間が変わる方法は3つしかない。

1つ目は、時間配分を変える。
2つ目は、住む場所を変える。
3つ目は、付き合う人を変える。

この3つの要素でしか人間は変わらない。最も無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。

by 大前研一

この言葉の真意は、自分の人生に意識的に手を加えて仕組みを変えろということですよね。「気分を新たに!」で簡単に習慣は変わらないし、「話を聞いてモチベーションが高まりました!」だけでは意味がない。

これをそのまま【自分→社会】に当てはめても同じです。意識的に手を加えて仕組みをつくらなければ社会は変えられないということがわかりますよね。

大学後半には「消費社会学」を研究するようになり、ビジネスで大衆を動かすには消費から変えさせることが一番、と発見しました。人々の消費行動を変えることで社会を変えていくビジネスに出会います。

入り口はエシカルファッション

エシカル=道徳的な、倫理的なという意味で、意義をもって楽しむファッションのことです。例えば動物の毛皮は着ないとか、児童労働で作られた服は着ないとか。

ただし「カッコよくなければ意味がない」というのがエシカルファッションの面白いところ。天然素材のコットンを使ったゆるい服や、環境にやさしいエコバックなら今までにもありましたが、それとは違いカウンターカルチャー的な雰囲気を持っています。エマ・ワトソンなど世界的ファッションアイコンたちも注目し、ちょっとしたムーブメントが起こりました。

ブランドを調べたり、某有名商社のオーガニックコットン生産プログラムの話を聞きに行ったりしているうちに、「ビジネスで社会問題を解決しようとしているカッコイイ大人たち」に出会いました。

※今となっては大衆化した気がしていますが、エシカルファッションを知らない人はこのへんを見てみてください

» 「エシカルファッション」「フェアトレード」って何?|Fashionsnap
» どんどん面白くなっているエシカルブランド13選|MYLOHAS

北米へ行き、オーガニックトレンドを肌で感じて

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そんなソーシャルグッドな消費についての研究をいったんお休みして、1年ほどカナダに滞在しました。

そこで出会ったのが「オーガニック」で、のちの卒論のテーマにもなるのですが、日本と北米の「オーガニック的なものの消費」に対する意識の違いに驚きました。

オーガニックって日本では「無農薬」とか「有機野菜」とかのイメージが強いと思うんですが、北米では食品に限らずもっと広い範囲の消費にかかっています。しかも、当時(2012年)の北米では、トレンドに敏感なおしゃれな女性たちが次々に生活に取り入れているすごく先鋭的な概念でした。

日本では「ゆるふわ田舎暮らし」みたいなイメージで正直ちょっとダサかったけど、北米では「都会のおしゃれなトレンド」になっている。さらにその消費が「極めて自分本位であること」もポイントでした。

「カッコイイから」
「デザインが好きだから」
「憧れの人が使ってるから」
「なんかいい感じだから」

人が消費行動を変えるのって、自分の判断基準で「それがいい!」と思ったときですよね。社会のためにと思って我慢しながら選ぶ消費は、結局ずーっと続けていくことはできません。

自分のためにいいと思ってした消費行動によって、たまたま社会にもいい感じに影響があるというのが一番理想的な社会の形だなーというのが、卒論にも書いたゴールでした。

消費から社会を変える、PRという仕事

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消費が変われば、社会が変わる。じゃあその消費を変えるにはどうしたらいいのか?

そこでPR(Public Relations)という仕事に行き着きます。

すでに長いのでPRのことは割愛しますが、これがまさに「消費を動かして社会を変える」仕事でした。新卒でPR会社に入り、実務を通してたくさんことを学べて最高の環境でした。でも正直、社会を変えるまでのPRをやるのはかなり難しかった……。

自分の知識や経験が足りなかったのもありますが、業界全体の環境としてもやりづらく、PRに関する世の中の理解度がまったく追いついていないことがわかりました。クライアントが「とにかくメディアに出せ!」しか言わなかったら、社会の変えようもありませんよね。

個人の発信でできることには限界があるので諦めモードですが、まだまだPRには消費を変えて社会を動かす力があると信じています。むしろ、PRの力を使わないことってたくさんある!

 

その呼びかけで世界は変わる?

最近の日本では、世の中の歪みをなんとかして正そうと、活発に運動が起こっています。

「みんなで勇気を出して声を上げよう!」
「署名を集めよう!デモをしよう!」
「社会をよくするために寄付をしよう!」
「もっとこの問題に関心をもとう!」

無意味だとは言いません。寄付は寄付でも、震災時など急にお金が必要なときなどに行うのは賛成ですし、一時的な手段として署名が有効なときもあると思います。

でもその運動は果たして本当に根本的な解決につながるのか?は、常に考えたほうがいいかなと思っています。自己満足気味なパターンが少なくないなと感じます。

もっと長期的な目線で考えなければならない社会問題……。貧困、性別や人種による差別、児童労働、などなどありますが、こういうのはいくら声を上げて意識を高めても解決しません。小学校の教科書にのっていたことが未だに解決していないことを考えれば、なんとなく察しはつくかと思います。。

人間ひとりの人生はせいぜい80年くらいなので、そのことに気づくには短すぎるかもしれません。でも歴史を学べば、人々が何年も同じことを繰り返していることがわかります。

ちょっと壮大な締めになってしまいましたが、「ビジネスで仕組みをつくることでしか社会は変えられない」という話でした。最後までお読みいただいた方、ありがとうございます!

おわり。

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