Public Relations

コネで記事掲載!ではない、メディアリレーションズの本当の価値

PRや広報の仕事をしていると必ず聞く、メディアリレーションズ

メディアとの関係をつくっていく活動のことですが、よく「コネをつくって記事掲載してもらうこと」と誤解されています。

PRの仕事を6年ほどやってきていますが、メディアリレーションズの本質は「記事になること」の先にあります。

メディアリレーションズの基本的な手法、記者さんとの繋がりかた、良好な関係づくりのためにはどうすればいいのか、本質的な価値とは?などをシェアします。

 

メディアリレーションズはPR広報活動の基本

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メディアと良好な関係を構築していく活動の総称を、Media Relations(メディアリレーションズ)といいます。

対メディアの活動は、PR広報の仕事のうちかなり大きなボリュームを占めています。

「メディア」には、以下のようなものを含みます。

  • テレビ:報道・情報番組など
  • 新聞:全国紙、地方紙、スポーツ誌など
  • 雑誌:月刊誌からフリーペーパーまで
  • WEB:多種多様なWEBメディアとそのSNSアカウント

企業の情報は基本的にはこうしたメディアを介して生活者に届くため、メディアリレーションズはPR・広報担当者の核となる業務ともいわれているのです。

 

ベーシックなメディアリレーションズの手法

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メディアと良好な関係を築いていくための基本的な手法には、以下のようなものがあります。

 

プレスリリース配信

企業としての公式発表として、プレスリリースをメディア向けに配信。届いたプレスリリースをきっかけに、メディアとの繋がりができていく。

届いたプレスリリースはメディアの制作局や編集部で見られ、ニュースバリューで選別され、取材するかどうか判断されます。

配信自体は一方通行ですが、それをきっかけに問合せを頂いたりして、関係がだんだんできていきます。メディアの人に反応してもらいやすいプレスリリースについては10本ほどの記事でまとめているのでこちらもどうぞ。

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メディアプロモート(メディアキャラバン)

個別にメディアの方にアタックするメディアプロモート。実際に出向いて対面するメディアキャラバンもあります。

「営業活動」のメディア版という感じで、直接コンタクトして自社の情報を紹介したりします。

新商品を実際に持っていって説明するなど、メディア行脚をする活動を「メディアキャラバン」とも呼びます。モノがあるタイプの企業はやりますよね。

企業はぜひメディアの連絡先やコンタクト情報をまとめた「メディアリスト」を作成し、関係性を常にメンテンナンスしていけるようにしましょう。

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プレスツアーの開催

記者さんたちを複数名まとめて、「プレスツアー」というかたちで招待。旅行ツアーのように遠方にお連れすることも、近場の施設などをご案内することも含む。

文字通り、東京のメディアの方を地方や海外に招いたりして、旅行のような「ツアー」をすることもあります。工場見学をしてもらう、新施設を見てもらう、自社に縁のある場所へご案内する、などもプレスツアーです。

ツアーをしながら会話をしつつ、関係を築いていきます。

 

記者発表会への招致

新商品のお披露目時などには、記者発表会やPRイベントをすることも。メディアの方が一同に会すチャンス。

こういったイベントは一斉に集まるので、別のメディアの人同士の会話のなかで生まれる関係もあったりします。

ただのアテンド係にならず、積極的かつ邪魔にならないようにお声掛けして、関係づくりをしていく場です。飲食店の試食イベントなどの場合は、会話のきっかけがつくりやすいですね。

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メディアとの会食・交流イベント

半分プライベートな雰囲気の会食や、多くの人が集まる交流イベント。

社交性が高くないとしんどいだけなのですが、メディアの方と一緒になる会食や交流イベントもいい場です。

特定の業界ごとに区切ったり、関係ある会社さんを呼んだりして、コネクションを増やしていきます。「人脈のため」と思うと嫌らしいけど、単純にいろんな方と業務外でお話すると、知見が広がって楽しいですね。

 

 

メディア・記者さんと繋がる方法

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上記のような基本業務もありますが、その他というかそれ以前に、どうやって糸口を探せばいいの?という方も多いと思います。

テレビのディレクターさん、制作会社さん、雑誌編集者さん、新聞記者さん、WEBメディアの編集者さん、フリーライターさん……

まあ人と人なので、当たり前のことばかりですが、繋がりかたはこんな感じです。

 

取材してくれた記者さんと繋がり続ける

一度でも自社について取材してくれたら、その記者さんとは関係を保ちつづけるのがおすすめ。

しつこくご飯に誘う……とかではなく、次にプレスリリースがあったときに直接お送りするとか、その方が興味を持ちそうなネタをご連絡するとか。情報をもらって迷惑な記者さんはあまりいないので、GIVEしまくりましょう。

 

記事から直接アポを取って会いに行く

まったく無の状態からルートを開拓する場合、

自社のネタに近いことを書かれている記事を見つけ、それを書いた方に名指しでアポイントを取って会いに行く

ということもできます。ちょっとハードルが高いですが、タイミングが会えば普通に会ってくれます。最近ならSNSでコンタクトしてみるのもいいですね。

 

イベントで知り合った方に連絡してみる

誘われたビジネス系のイベントには積極的に参加して、知り合ったなかに自社の情報を好きそうな方がいれば、後日連絡を取ってみましょう。

一方的に売り込まず、相手にとってのメリットを伝えることが大事です。

改めてご挨拶に伺わせてくださいー!といえば、そんなに嫌な顔はされないはず。

 

他社の広報さんなどに紹介してもらう

同業他社の広報さんとは、ライバル企業であっても協力したほうが何かといいです。

広報担当同士で情報交換したりして、お互いに困ったときは紹介しあえるといいですね。メディアの方にとっても、情報が入りやすくなるので、一石二鳥です。

 

メディア・記者と良好なリレーションを築くには

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メディアリレーションの手法はいろいろあるのですが、そのノウハウを高額で売っている会社もあるほど、技術勝負な世界です。

ですが、本質は人と人とのコミュニケーションなので、相手に何を与えられるかを常に心の片隅において接すれば大丈夫です。いくつか気をつけるべきポイントを紹介します。

 

一方的な「売り込み」をしない

アポが取れたからといって、つい鼻息荒く自社アピールをしまくっても、引かれてしまいます。

よく言われるのが、メディアの方と対面で話すときは「こっち3割:向こう7割」くらいの発話量がいいよという話。どちらかというと聞き手に回り、「会話すること」を心がけたほうがいいです。プレゼンテーションしがちになってしまう人は多いです。

しつこい売り込みは本当に嫌われるし、PR広報界全体にとって良くないので、やめましょう。

 

常にメディアの視点に立って考える

上記と関連しますが、自分本位ではなく、メディアの視点に立って考えること。言葉で書くのは簡単でも、意外とこれがむずかしい。

最低限、その記者さんが書いた記事や最新号の雑誌などは、目を通していくようにしましょう。そのメディアのスタンスがわかっていないと、自己アピールになってしまいます。

デキる広報PRは、自社のことだけでなく業界情報や周辺ネタまであわせてもっていきます。広い視野と心の余裕がポイント。

 

「仲良くなること」が目的ではない

メディアリレーションズ=メディアの人と仲良くなる、お友達になる

と勘違いしている人がいますが、仕事です。

馴れ合いになるのはよくないので、プライベートに踏み込むのもほどほどにしましょう。好きなメディアだけ贔屓するのも、広報担当としてあまりよくないです。

お友達になって記事掲載してもらえるほど甘くないです。いつだって掲載するかどうかはメディアバリューで判断するのが、プロのメディアです。

 

教えてもらう姿勢でも別にいい

よくあるのが、メディアの人にたいして上から目線でいってしまうこと。

「プロのメディアに対して、こっちもしっかり見せなければ」という意識からだと思いますが、逆に教えてもらうくらいの低姿勢で大丈夫です。知ったかぶりが一番よくない。

メディアの方は圧倒的にその業界事情に詳しいし、もしあなたが広報担当になったばかりの人だったら、知識の差は歴然。教えてもらいつつ、こちらが持っている情報をしっかり伝えて、役に立てればOK。

 

すべての関係性が連動している意識を持つ

「メディアリレーションズ」とは言うものの、メディアと“だけ”関係を築けばいいってものでもありません。

先ほど書いたような他社の広報だったり、ときにはプライベートの友人まで、どこからどうメディアに繋がるかわかりません。というか最近は個人の発信力もあなどれないですしね。

すべての関係性が連動している意識を持ち、「影で特定のメディアを悪く言う」みたいなことのないように気をつけましょう。

 

メディアリレーションズは、“コネ”や“人脈”をつくる活動?

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「メディアリレーションのある人を探しています!」

という求人募集がよくあることからもわかるように、まだまだ世間的には、コネ・人脈という意味でメディアリレーションズという言葉が使われます。

実際にやってみるとわかりますが、

  • 仕事上のコネや人脈は、価値を提供し続けることでキープされる
  • 職場が変われば、新しい関係が構築されていく
  • メディアの方もいずれ異動されたりする

という点で、絶対的に永遠なメディアリレーションなんて存在しません。

元からリレーションがあるかどうかより、それを築いていけるスキルがあるかを見るべきだし、広報担当側もそこを磨くべき。

すべての業務がリレーションづくりに影響しています。たとえば、原稿を戻すときのメール1本で関係性は変わったりします。

「人脈がどれだけあるか」にとらわれると、お互いにとって不幸です。

 

注意:メディアリレーションズを売りにした有料イベント

よく、「有名テレビディレクターと繋がれる!」みたいな宣伝文句で集客しているPR広報系イベントがあります。

「参加者特典:現役記者との名刺交換」だったりしますが、その程度のつながりで取り上げるほどメディアも落ちてないです。

未だに「名刺交換時に勝負は始まっている!」みたいな記事も見かけますが、惑わされないように。

 

本質的なメディアリレーションズの価値を考えよう

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本当の価値はメディアと繋がりを増やすことはでなく、

メディアの方との対話を通して、世の中が求めている情報を知り、そのフィードバックを自社に還元し、企業と社会のよい関係の循環をつくっていくこと

だと思います。メディアリレーションがいつの時代も変わらず重要なのは、メディアは世の中を反映する鏡だから。

メディアの立場は時代によって変わっていきますが、メディアとの関係づくりを通して世の中のフィードバックをもらうことは、企業経営にとって一定の価値があります。

目的は「メディアに乗せてもらう」ではなく、その先に置いておくといいですね。

メディア視点がわかるようになってくると、次のハードルは社内との板挟みです。。この力が広報力でもあったりするので、社内調整力も鍛えていきましょう〜!

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おわり。

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