社会がめまぐるしく変わるなかで、これからのキャリア形成に悩んでいるPR・広報パーソンから相談を受けることもあります。
「PR会社にいるけど、事業会社に移ったほうがいいのかな?」
「ベンチャーのひとり広報をやってるけど孤独で辛いな」
「忙しい業界だから子どもが生まれても続けられるかな?」
など、ひと口にPR・広報といってもさまざまなキャリアパスがあり、悩みの方向性もいろいろだと思います。
私は新卒でPR代理店に入り、事業会社の広報、フリーランスなど、年数のわりにはバラエティ豊かな経験をしてきました。
経験したことのあるすべての形態・職種・働き方を並べ、どんな選択肢があるのかを提示してみます。実際に相談してくれた後輩などをイメージして書いてみるので、キャリアにお悩みのPR・広報の方(20〜30代くらい)は参考にしてもらえればと思います。
Contents
はじめに:PR・広報の職業価値はこれからの時代も高まる
「PR・広報をやっているけど、本当にこのままでいいのか迷う。思い切って異業種にチャレンジするなら今がラストチャンス……?」
と考える人も特に20代後半だといるかもしれませんが、こんな時代だからこそPR・広報という職種のニーズや価値は高まっていくので、そのままで大丈夫というのが個人的な意見です。
「社会起点で事業を考えなければ企業が生き残れない時代になってきている」ので、事業を行なう上で「PR視点」「PR発想」を取り入れることの重要性はこれからもっと増していきます。
PRは人の共感や感情を扱う仕事のため、AIにとって代わられることもなく、きちんとキャリアを積んで横展開もしていければ一生困らない職種だと思っています。
▼経営の上流からPR視点やPR発想を入れていく考え方はこちらもどうぞ
▼PR・広報の仕事が気になる人はこちらもどうぞ
» 5年やって思う、「広報」という仕事のやりがいと魅力【面白くするのは自分】
» PR会社から事業会社広報への転職ってどうなの?PRパーソンのキャリア形成
» 未経験から広報に転職するのは可能。最短ルートを紹介します
» PR会社への転職は、むしろ未経験のほうがいいのかも
私のPR・広報キャリアと、働き方の経験
経験してきた形態・働き方をリストアップしてみました。
- PR代理店
- 大企業広報(PR代理店時代の半身)
- フリーランスPR
- スタートアップのPR・広報担当
- 副業でのPR・ライター
- クライアント常駐、伴走型サポート
- リモート会社員
- 解雇・無職
- 海外フルリモート
- 外資系PR
- 複業・パラレルワーカー
めちゃくちゃ豊富なように見えますが、単にジョブホッパーだっただけで、経験年数は大したことありません。ただ、広く浅くあらゆる角度から「PR・広報」という職種や「PR・広報業界」に向き合ってきてはいます。
ひとつずつメリット・デメリットなどを紹介していきます。※メリット・デメリットは自分の経験に基づく主観的なものです
1. PR代理店
新卒で入社したPR代理店では、何も知らないところから育ててもらいました。
大企業からベンチャーまで規模も業種もさまざまな会社と向き合い、広告代理店や制作会社、各種メディアなど、近い業種の人たちともご一緒しました。
華やかなイメージの裏ではとても泥臭い業界。若いうちに基礎体力をつける意味で経験できてよかったかなと思っています。
体系的にPR・広報を学べ、圧倒的に鍛えられて力がついた。さまざまなPR手法や業種ごとのやり方をまんべんなく知れた。
●デメリット
忙しい業界なので食らいつくタフさが必要。複数の企業をいろいろ担当するため、自分の本当にやりたいことができないこともあった。人間関係や大組織ならではのルールも大変。
2. 大企業広報(PR代理店時代の半身)
ちょっと特殊ケースですが、PR会社時代に、あるクライアント企業さんの「広報」を社内まで入ってやらせていただいていました。大手飲食チェーンの企業です。
やはり大手なので、ブランド保守や危機管理広報などの観点から、PR会社とは違う経験ができたのは大きかったです。大企業ならではの大きなシーズン企画や、長尺に渡るテレビ企画のアレンジなどもありました。
大企業広報は、スタートアップやフリーランスなども経験してしまった今となってはモヤモヤすることだらけですが、経験しておけてよかったと思っています。
ブランド保守や危機管理などの広報にも触れられた。予算があるためダイナミックなPRやテレビ取材も経験できた。
●デメリット
スピード感が遅かったり、連絡手段がアナログだったりする。保守の意識が強く、攻めの企画はなかなか通らなかった。社内政治が大変。
3. フリーランスPR
PR会社を卒業してフリーになりました。PRはスキルが属人化しやすいので、独立はよくあるキャリアステップです。
PR会社の経験をベースに、規模や業種を変えて個人でやるような形でした。スキル面ではPR会社のときほど伸びなかったけど、別の意味ではかなり勉強になったと思います。自分ですべて回していくのは、やってみないとわからないものです。
自分の関心領域に近いことができるのもフリーの魅力。必ずしも「独立=ゴール」ではなく、キャリアの途中で挟むのもありだという考えに至りました。
自分の裁量で活動ができて自由度も効き、好きな会社にも関わりやすい。時間や場所も、忙しさも、フレキシブルに調整できた。
●デメリット
規模の大きい仕事には関わりづらく、スキルの切り売り感はたまに感じた。基本的には外部人材として1名で企業と接するため、プレッシャーや孤独感は大きい。
4. スタートアップのPR・広報担当
事業やビジョンに共感したスタートアップに入社したこともあります。
スタートアップの広報は、やりがいはあるけど孤独で難しいポジションです。PR・広報のキャリアをまっとうに歩んでいく人には、全員におすすめできるものではないかなと思いました。
それまでに学んできたPR・広報の常識がガラガラと音を立てて崩れていくと思いますが、挑戦するには面白いキャリアだと思います。
スピード感をもって会社の成長フェーズにあわせたPRが経験ができ、好きな会社を自分の手で広めていくやりがいがある。
●デメリット
PR・広報以外の業務もマルチにこなす必要があり、縦より横にスキルが伸びていった。報酬はフリー時代よりは下がる。スタートアップはハードシングスが多すぎる。
5. 副業でのPR・ライター
スタートアップ在籍中に、副業もやっていました。PRや、ブランディング視点でのライティング、取材記事執筆などを主に。
フルタイムの勤務外にやることになるので大変ですが、副業は収入が得られるだけではない面白さもあります。自分の好きなことに関われるのはいいですね。
本業と副業でレバレッジをかけられるような働き方ならよいですが、「スキルアップ」や「収入」を目的に副業をやるのは、個人的にはよくないかなと思ったりします。
本業とレバレッジをかけてよい効果を生めた。本業でできないスキルを補ったり、副業で生まれたつながりを本業に活かしたりもできた。
●デメリット
夜間・週末の限られた時間での稼働になるため、できることには限界がありバランス調整が難しい。気づくと週7で仕事してることも。
6. クライアント常駐、伴走型サポート
クライアント企業に週2〜3日常駐したり、伴走型で経営者さんや社内のスタッフさんをサポートをしたりという入り方もしていたことがあります。
より内部に近いところで関われるので、本質的なPR戦略ができたりします。受託型でこなすPR案件にはどこかで限界を感じると思うので、フリーランスを経てこの関わり方に行き着いている知り合いも多いです。
内製化できるようにすることがゴール(自分が離れられたほうがいい)なので、少し切なかったりもしますね。
常駐することで会社の雰囲気や情報などがつかみやすく、一般的な外注よりは踏み込んだPR戦略提案ができるようになる。
●デメリット
教育やアドバイザーのような入り方になるため、自分のスキルは伸び悩みやすい。出せる成果が実務担当のスキルレベルに依存しやすい。
7. リモート会社員
リモートワークに寛容な企業に雇われれば、フリーランスに近い働き方は実現できます。フリーから会社員に戻るとき、働き方の自由度が高かったからなんとかやっていけた感があります。
同じリモートワークでも、フリーと会社員ではけっこう違います。成果をどう評価してもらうのかなど、会社側の体制や評価制度も気にしながら働く必要が出てきます。
もしフリーランスに憧れる理由が「時間や場所の自由度」だけであれば、会社に属してリモートをするのもおすすめ。独立は誰でもできるけど大変です。
会社員であってもリモートワークに慣れた会社であれば、フリーランスとさほど変わらない働き方ができる。ノウハウも学べ、福利厚生など雇われるメリットも享受できる。
●デメリット
やはりリモートといえど時間は固定されるため、場所だけ自由で時間は固定というやりづらさはある。評価の仕方が難しく、会社の体制によりまちまちなところがある。
8. 解雇・無職
これはキャリアではないけど、これから経験する人も多そうなので、含めてみます。
会社をやめざるを得ない状況になり、3ヶ月ほど無職だったこともあります。キャリアに悩んでいる人は、一回時間をとって考えてみることも大事かなと思います。PR・広報から派生した職種なども今の時代はたくさんあるので、新しい選択肢を見てみるのもいいかと思います。
自分のキャリアを見つめ直すために、必要な時間だった。いろいろな人の話を聞くと、新しい選択肢が生まれる。無所属だから聞ける話もある。
●デメリット
収入がない状態で迷っていると精神衛生的にはよくない。
9. 海外フルリモート
海外からフルリモートでPR・広報をやるのは、少し難しいけどできます。
PR・広報は国ごとのカルチャーやトレンドが深く関わり、人と直接会うことで進むコミュニケーションも多い職種。東京などにいたほうが有利ではありますが、工夫次第で海外からでもできます(経験済み)。
その方法については別の記事で書きました。こちらも参考にしてみてください。» リモートワークで広報の仕事はできるのか?経験から辿り着いた工夫の数々
住みたいところに住んで、海外で暮らしながら仕事ができる。海外の視点を企画などに活かすことができる。
●デメリット
そうは言っても物理的距離はハードルになる。高いデジタル力と言語化力が求められ、工夫もかなり必要。
10. 外資系PR
外資系企業の日本向けPRをフリーとして経験しています。
外資系は考え方や働き方の面ではとてもいいのですが、PR・広報に関していえば、市場がまったく違うことによる大変さがあります。
海外と比べると日本のPR・広報はかなり特殊です。具体的なことは改めて紹介しますが、とにかく市場やカルチャーがまったく違うなかでの活動を本国にどう認めてもらうかは大変かも。面白さはありますね。
アセットが豊富だったりサービス展開が早かったりで、PRのネタには困らない。日本企業らしい人間のごたごたがなく評価もさっぱりしているので、本質的な仕事がしやすい。
●デメリット
世界と日本のPR・広報事情が違いすぎて、本国側にわかってもらうのが大変。意思決定や戦略の方向性は本国でされるため、やれることは限定的なことも。
11. 複業・パラレルワーカー
メインやサブの区別なく複数の職種を並行するのがパラレルワーカー。
PR・広報というと取材対応やメディアリレーションを思い浮かべると思いますが、最近は時代の変化にともなって、手法がかなり多様化しています。
PR・コミュニケーション全般という大きな傘の下、周辺領域の「編集者」「Web制作ディレクション」「海外市場リサーチ」「翻訳」などにも手を広げることが可能です。会社ごとに違う職種で入るのもありですね。
いろんなプロジェクトにいろんな方向性から関われる。PR・広報としての対応領域を広げながらスキルアップもしやすい。
●デメリット
完全ジェネラリスト型になるので会社員としての受け入れ先が少ないかもしれない。履歴書に書けるキャリアにはなかなかならない。
PR・広報パーソンからのキャリア展開は無限大
こうして見ると、PRパーソンとしての選択肢って、めちゃくちゃ多いと思いませんか(私の動きが迷走しすぎ)。
PR代理店から事業会社に移ることもその逆もあり、大企業とスタートアップでも、BtoB事業かBtoC事業化でも、やることはまるで別種目です。PRは独立しやすい職種だけど、会社の中で動くのとフリーでやるのとでは、求められることも得られることも違います。
PR・広報系の仕事探しにおすすめの転職サイトをのせておくので、いろいろと選択肢を見てみてください。
シンアド
リクルートエージェント
おなじみのリクルート。大手だけあって求人数は多く、間違いない求人サイト。全体感をつかむためにも面談はしてみたほうがいいかも。
DODA
こちらも大手・優良企業が多いです。広報職の求人も多数あります。アドバイスやカウンセリングが丁寧。
キャリアに悩んでいる人は、他の記事もどうぞ。
▼PR・広報の仕事が気になる人はこちらもどうぞ
» 5年やって思う、「広報」という仕事のやりがいと魅力【面白くするのは自分】
» PR会社から事業会社広報への転職ってどうなの?PRパーソンのキャリア形成
» 未経験から広報に転職するのは可能。最短ルートを紹介します
» PR会社への転職は、むしろ未経験のほうがいいのかも
おわり。