オーストラリアには、スタートアップのイメージがあまりないと思います。
でも実は、ここ数年で一気にスタートアップシーンが盛り上がっていて、国内はひそかに活気があるんです。
特にシドニーには多くの起業家が集まっています。南半球最大のスタートアップハブとして有名な「TANK STREAM LABS(タンクストリームラボ)」の中を見てきました。
施設内の様子と、最近(2019年)のオーストラリアのスタートアップ事情についてわかったことをシェアします。
Contents
オーストラリアはスタートアップにとってどんな国か
オーストラリアは長らく「起業家不毛の地」といわれてきました。
その理由はいろいろあるのですが、オーストラリアは日本と同じく独立した島国。それでいて、農業や畜産業が盛んなので、食料などもほとんど国内でまかなえてしまいます。
国は潤っていて、経済状況もよい。人々も平和に暮らしている。
そんな穏やかな環境に加え、政府の援助体制の薄さや力の入れてなさもあって、なかなか起業家マインドを持った人が生まれにくい環境だったようです。
メルボルンのスタートアップGleamという会社が、Why Being an Australian Startup Sucksという記事で、オーストラリアにスタートアップ文化が根付かない理由を説明しています。
アメリカのテストマーケティング市場?
とはいえ言語が英語だったりカルチャー的にも欧米に近かったりで、「アメリカのテストマーケティング市場」といわれたりもするんですよね。
シリコンバレーの企業などが、自国で展開するまえにまずオーストラリアで実証実験をしてみたりするようです。
オーストラリアの代表的なテクノロジースタートアップにAtlassianがありますが、登記住所をイギリスのロンドンに変更したことも、「オーストラリア離れ」として話題になりました。
なんだかスタートアップシーンでは影の薄いオーストラリアです。。
注目のオーストラリア発スタートアップ
でも実は、オーストラリアにも注目のスタートアップはいくつかあります。
個人的に注目しているのが、無料ツールデザインのCanva。
Canvaは、サイト上でテンプレートを選べば、プロのデザイナーのようなポスターやグラフィックが簡単につくれるというもの。
実は、このブログのアイキャッチ画像もほとんどCanvaで作成しているほど愛用しています……!(シンプルなものですが)。
Canvaはシドニーで2012年に創業したのですが、働き方がとても先進的で、2017年にオーストラリアで最も働きがいのある会社に選出されたらしいです。2019年4月にはオフィス移転し、今は500人以上の規模まで成長しています。
このあと紹介しますが、オーストラリアはスタートアップ向けの制度などが整っていないので、「オフィス移転」はけっこうすごいことなんですよ。成長していてこれからも確実な成長が見込めないと、とてもできない……。
南半球最大のスタートアップハブ「TANK STREAM LABS」
オーストラリアでは「オフィスを借りる」ことのハードルがものすごく高いのです。
最初に賃料の6ヶ月分をbond(ボンド=敷金のようなもの)として払い、さらに最短5年の契約保証が条件になるらしい……!
これは、現地のスタートアップハブのお姉さんに聞きました。6ヶ月分の家賃を払って5年契約なんて、大企業でもためらいますよね。。恐ろしきオーストラリア。
というわけで、大都市シドニーでは、コワーキングスペースを兼ねたスタートアップハブにほぼ全スタートアップが入居するくらいの勢いがあります。
そのなかでも断トツ規模の、南半球最大のスタートアップハブ「TANK STREAM LABS(タンクストリームラボ)」を見てきました。
TANK STREAM LABSの基本情報
シドニーの中心部にあり、駅直結のビルがまるごと全部この施設になっています。
- 400以上のスタートアップ
- 550人以上のメンバー
ということで、わりと規模がどうかしてます。
- 24/7営業。キッチン、シャワー、レストルーム完備
- ハイスピードWi-Fi
- スタッフ常駐のサポート体制
- 設備充実のミーティングルーム
- ネットワークイベント多数
- BAR付きのイベントスペース
設備はこんな感じで、日本にもあるスタートアップハブとあまり変わらないですかね。ただし階数がすごいです。
こちらが料金表。好きなときにデスクを使うだけのホットデスクプランもあるので、個人でも入ることができます。
シドニーは普通に都会なので、地下鉄で行きましょう。駅では長いエスカレーターがおなじみ。
ビルのエントランスはこんな感じできれいです。駅から直結なので、アクセスは抜群によいです。
広々としたオフィススペース
中を見てきました。受付はこんな感じ。
入居企業(歴代含む)のロゴがばーっと貼ってあります!ひとつも知らないのですが笑、きっとオーストラリア人からしたら日本のスタートアップもひとつも知らないんでしょうね。
かなり独自の世界線(?)ができあがっている印象です。グローバル規模のものは少ない。
自由に使えるオフィススペース。普通におしゃれな感じです。
ソファなどもあって、居心地がよさそうです。
緑もありました。
別の部屋もあります。こちらは、もっとカッチリしているというか、普通のオフィスっぽさがある。
デザインや空気感もかっこいいですね。オペラハウスに夕暮れグラデーションは、シドニー感があふれている。
キッチンスペースが盛り上がりすぎ
なんだか人が少ないな……?と思ったかもですが、行ったのが金曜の夕方だったので、もうみなさん早々に仕事を切り上げて飲んでいたようです。
ちなみに、オーストラリア人の働き方はたいへん牧歌的。もちろんファミリーファーストで夕方に帰るし、たとえスタートアップであっても夜中まで働き詰めみたいなことはしないようです。
そのほうが生産性上がりますしね。
こちらがキッチンスペース。冷蔵庫にめっちゃ牛乳あるのが面白いですね。オーストラリア人はコーヒーが大好き。
写真からは伝わりづらいのですが、奥にビリヤード台があり、重低音のクラブミュージックが響いています。
BARカウンターがあり、完全に雰囲気がただのクラブ。
遊んでるだけやん。
いや、そういうところがスタートアップなのかも。羨ましくなってきました。
まとめ:これから面白そうなオーストラリアのスタートアップ
これはまだ公開してない情報っぽいのですが、「TANK STREAM LABS」をメルボルンにも作る計画があるようです。(日本語だから書いちゃうけど)
今はやっぱりシドニーが一強という感じですが、メルボルンにもこういう施設が増えていったら面白いことになりそうですね。
ちなみに、ブリスベンのスタートアップシーンもなかなか盛り上がっているらしく、Slushの元幹部も参戦 ブリズベンが「起業家の街」へと変貌する|Forbes JAPANという2018年の記事も見つけました。
ブリスベンは東海岸沿いのもっと北のほうにある都市で、シドニーやメルボルンよりも気候がよく、家賃も安い。ビーチリゾートにも近い。ということで、近年はブリスベンもスタートアップの街として注目されているみたいです。
まさにこれから、という感じで楽しみですね。
「ブリスベンは第2のシリコンバレーになれるのか?」
追っていきたいと思います。
おわり。