Public Relations

PRパーソンがあまり使わない「プレスを打つ」という表現からわかること

スタートアップ界隈などでよく聞く表現に、「プレスを打つ」というものがあります。

「プレスリリース(ニュースリリース)を配信する」ことを指しているようなのですが、PR会社を辞めてからやたら聞くことが増えました。

PR会社時代は、誰も言っているのを聞いたことがありません。企業広報や記者さんも、ほとんど使わない気がします。この言い方をするのは、PRパーソン以外の人なんです。

「プレスを打つ」という謎の表現について考えてみました。

★プレスリリースについては全10記事以上でまとめていますので、しっかり学びたい人は下記の記事からどうぞ。

手紙のように想いが届く、プレスリリースのすべて【全11記事】広報PRを始める人が最初にぶち当たる壁は、プレスリリースの作成・配信です。 プレスリリースとは、メディアや各ステークホルダーに向け...

プレスリリースは「配信する」ものだと思っていた

Press shoot 4

ではPR会社ではどんな言い方をしていたかというと、

「プレスリリースを配信する」

これがほとんどです。他の言い方としては、

「プレスリリースを送る」
「プレスリリースを出す」

などもあります。

 

プレスリリースを配信する方法としては、大きく以下の2つがあります。

  • プレスリリース配信サービスへの登録
  • メール・FAX・郵送によるメディアや記者への直接配信

 

プレスリリース配信サービスに登録すると、WEB上に掲載されると同時に、そのサイトが提携している複数メディアにメールなどで配信される仕組みになっています。(※プレスリリース配信サービスの仕組みについてはこちらの記事をどうぞ)

そして同時に、メール・FAX・郵送などの多様な手段を使っての直接配信も行います。どちらかというとこっちのほうが大事なのですが、「配信サービスに登録してWEB上に掲載される」ことにフォーカスしてしまっているから、「プレスを打つ」という言い方が生まれる気がしました。

事業社サイドの人たちと話していると、WEB上に載せることそのものに意味を見出している感じがありました。サイト上に文章や画像がのっていることをそのものが「プレスを打つ」ことだと。

確かにそのまま配信サイト上で見てくれる人もいるのですが、プレスリリース配信の本質は「メディアに情報を届けること」で、「自社ページに掲載すること」ではありません。ここにおかしな言い回しの根源がある気がしました。

 

「広告を打つ」「CMを打つ」と同じように思われている?

Press shoot 3

「プレス」はプレスリリースを略したのだとわかりますが、「打つ」という表現はどこからきているのでしょうか?

私はこれは、

  • 広告を打つ
  • CMを打つ

からだと思います。

広告やCMは、お金を払って時間と枠を買うものです。一定期間、駅の特定のボードをジャックしたり、話題のドラマの間の15秒枠を買ってCMを流したり。これに対して「打つ」という言葉が使われるのは、わかります。

「打つ」にはどこか、こちらから一方的に発射するもの、という印象があります。

広告やCMを「打つ」と、不特定多数の一般生活者に対して無作為に情報が打ち込まれます。当たればいいな、誰かの目に止まるといいな。そんな感じで、誰かの日常に入り込んで刷り込まれることを狙っています。

これはこれで世の中に必要な宣伝手法ですが、プレスリリースが同じように捉えられているのだとしたら……?その間違いは、全力で正したい。

 

プレスリリースは「打つ」ものか

Press shoot 1

プレスリリースを配信することを、「お金を払ってWEB上の掲載枠を買っている」という認識でやっているから「打つ」という表現が出てくるのだと思います。

プレスリリースはそれ自体を使って一般生活者に宣伝するツールではなく、メディアにニュースを伝えるための文書です。

宣伝文句を並べるだけなら、自社サイト上に自由にデザインした文書を掲載すればいいですよね。わざわざプラットフォームを使って配信するなら、「客観的に情報を伝達するためのお手紙」という位置づけにするべきではないでしょうか。

 

特にスタートアップ企業などは、「とにかく新しいサービスを出したりリニューアルしたりしたらプレスリリースを打つ」というのがセオリーになっている感があります。

とりあえず周りもやってるしそういうものだからという感じで、一種の通過儀礼的な感じでプレスリリースが扱われてるんじゃないかなあと、「プレスを打つ」の一言からいろいろ考えてしまいました。

 

「プレスを打つ」という言い方はやめたい

だらだら書きましたが、やめたいです。広告とPRの違いをわかっていれば使わない表現だと思うし、とても表面的なので。

なにより、その先にいるメディアの存在を意識していれば、「打つ」なんていう自分本位な言葉は使えないはず

「プレスリリースを配信する」と言いたいし、本当は「渡す」くらいがいいのかもですね。直接、メディアへの、お手紙として。そんなPRが当たり前になってほしいものです。

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おわり。

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